| Takatsuka Architects Firm Co., Ltd. | Japan |
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| 今、数奇屋に求められるもの |
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| - 「陰翳礼讃」から思うこと - |
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| 「もし、日本建築を一つの墨絵に例えるならば、障子は墨色のもっとも淡い部分であり、床の間はもっとも濃い部分である。…」昭和8年に発表された谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の一部である。 その当時から比較すると、日本人の住まいの在りかたは大きく変化し、住宅建築の進んできた道は、この「陰翳」の部分を取り除くことにあったと言っても過言ではないだろう。大きく開放され、明るくなった住空間は、私達の生活スタイルや日本人特有の美意識までも変えてしまったようである。 |
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| - 近代化の中で− |
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目まぐるしく進化する現代社会において、私達はストレスや心の渇きを覚え、精神的な休息の場を要求している。その様な中で利便性の追求や、物質面の豊かさを強調した新しい住宅が次々に生まれているが、精神的対応を考慮した建物は、皆無に等しいと思えてならい。 今、住宅にそれを求めるならば、忘れ去られようとしている「陰翳」を取り戻す事でなかろうか。 「陰翳」は現代社会の強烈な刺激を中和してくれ、暮らしの中に溶け込んで、薄らぎ、濃くなりながら、ゆったりとした時の移ろいを感じさせてくれる。この空間こそが、現代人の要求する癒し・安らぎを持った、理想の住まいと言えるだろう。 |
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| - 「陰翳」を持つ書院造りと数寄屋造り− |
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| 日本各地に見られた中門造り・高塀造り・土蔵造り・兜造り・せがい造り・等々が姿を消しつつある今日、伝統技術に支えられて生き続ける書院造り・数寄屋造りは、現代に残された数少ない「陰翳」を持つ建築である。深い庇や障子が光の階調をもたらすことによって生まれる空間の表情や、自然の素材が作り出す和の空間は、まさに癒し・安らぎを与えてくれる建築と言えよう。 | |
| - 私の数寄屋造り − |
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| 一般的に数寄屋造りと言えば、ホテル・旅館・料亭などを思い浮かべる人も多い。宿泊や遊興を目的とした建物は、昼中、無表情で沈黙していて、まるで人の気配を感じさせないが、宵やみがせまり、明りが入ると、闇を演出した空間は生き生きとよみがえる。打ち水がされ、清められた佇まいは、粋派手で艶気さえ感じさせる。 しかし、私の目指す数寄屋住宅は決してこのようなものではない。粋や派手さが影を潜め、控えめで楚々とした中に、住む人の人柄やセンスを偲ばせるような数寄屋であり、多様化した現代の生活スタイルに柔軟に適応できる住まいである。 |
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| - 結びに − |
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先年の旅行で、グラナダ・サクロモンテの丘(スペイン)を訪れた時に見たアラブ人街の白い壁は、今でも強烈に私の目に焼き付いている。 このぶ厚い壁の持つ安定感やぬくもり・安らぎは、決して西欧建築やイスラム建築のみが保有するものではなく、日本の数奇屋にも充分通用するものだと確信した。 そして今、伝統的なデザインの呪縛から解き放たれた私は、自由でシンプルな構成の中に、適度な「陰翳」を取り入れた、新しい数寄屋建築を目標とし、失われた日本人の持つ精神の回帰に、一役買って出たいと思っている。 |
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| 2001年5月 高務 治彦 |
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